童話:ハムスター雑技団

2014.11.24 Monday

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    自作童話
     
    ハムスター雑技団
    水谷文宣

     ロシアのハムスターの病院に、子どもハムスターたちが入院していました。お医者さんのロボロ先生は子どもたち思いで、毎につお昼ごはんにはハムスターの大好物ヒマワリの種をあげていました。それでもある日、患者のチュウ君とネズちゃんが言いました。「病院は退屈で元気が出ないよ。だから苦い薬は呑みたくないな。」その言葉を聴いてロボロ先生は、食べ物だけでは病気の子どもたちを元気づけられないと気づきました。それにロボロ先生は苦い薬でも呑んでもらわないと病気が治らないことを知っています。

     ロボロ先生は何とか患者の子どもたちを楽しませようと方法を探します。ロシアではよく雪が降ります。ある雪の日、子どもたちのお遊戯の時間に、全身が真っ白なチュウ君が丸まって雪だるまの振りをしました。すると他の子どもたちは大笑いしました。チュウ君に続いて、白黒柄のネズちゃんも丸まって大福もちの振りをしました。やはり他の子どもたちは大笑いしました。ロボロ先生は芸を見せれば子供たちを喜ばせることができると気づきました。

     そこで中国から芸の達人集団である、ハムスター雑技団を呼ぶことにしました。ロボロ先生はハムスター雑技団に来てもらえるよう手紙で依頼を出しましたが、中国からロシアまでは遠いから、と初めは断られてしまいました。そこでロボロ先生がお金をはずむという条件で頼んだところ、雑技団はしぶしぶロシアまで来ると約束してくれました。

     中国のお正月である春節という祝日に、ハムスター雑技団が病院にやってきました。ロボロ先生は春節に合わせて赤いちょうちんなどで病院を飾り付けしており、おしゃれになっていました。ロボロ先生はおしゃれな様子を見て子どもたちが喜べる雰囲気を少しでも整えようとしたのです。雑技団のジャン団長は春節にはどのハムスターも元気なものだと今まで信じていました。しかしロボロ先生の病院で子どもたちに元気がない様子を見て、励まさなくてはならないと感じました。

     まず手始めに、雑技団員たちは柵登りの技を披露しました。団員の身長の何倍もある柵を楽々と登って行ったのです。けれども子どもたちはフーンというくらいにしか思っていない顔です。次に雑技団員たちは透明な扉が閉じられた部屋からの脱出を披露しました。扉を咥えて引っ張ることでロックを外し、頭で扉を押して脱出しました。子どもたちは少し楽しそうな顔をしました。それから雑技団はホイールの上に乗りました。ホイールは、ふだんはハムスターが中に入って運動をするために使っている器具で、この病院にも据え付けられています。ホイールの上の雑技団員はホイールを中からではなく外から玉乗りのように回してみせました。子どもたちはかなり喜びました。

     子どもたちの反応を喜んだジャン団長は、雑技団のスターであるチャイさんにとっておきの雑技を披露するように指示しました。チャイさんはホイールの中を全速力で走り、急にストップしました。するとチャイさんの体はホイールの回転で後ろへと動き、チャイさんは逆さ向きにホイールを宙返りしたのです。それを見た子供たちは大はしゃぎしました。チャイさんは子どもたちの反応に応えてアンコールでもうひと宙返り。子どもたちはますますはしゃぎ、春節の飾り付けがされた病院の中で、子どもたちは喜びを表して走り回りました。

     子どもたちはこうして元気づけられました。ロボロ先生もジャン団長も満足です。ジャン団長は「中国からロシアまでは遠かったけれどもお金は通常の金額でいいよ」、とロボロ先生に言ってくれました。さらに、一部の子どもたちは思いっきり楽しんだことで、病気が治りました。他の子どもたちも、楽しいこともあるのだから苦い薬も我慢して飲もうと決心しました。薬をしっかりと呑むようになった子どもたちは少しずつ病気が治ってゆきました。

     ロボロ先生は「他の病院に入院している子どもたちも同じような楽しみが持てるといいな」、とジャン団長に提案しました。ジャン団長も他の病院でも雑技を披露しようと思っているところでした。そしてハムスター雑技団は中国ではもちろんのことロシアのみでなく中近東など世界各地の病院で雑技を披露し、子どもたちを元気づける雑技団となりました。猫食べられそうになる苦難を乗り越えて病院に赴くこともありました。こんな長旅をしたり猫に食べられそうになる危険を冒すことは、お金のためにできることではありません。お金ではなく子どもたちの元気こそがハムスター雑技団への報酬となったのです。

     ロボロ先生は子どもたちに言いました。「僕たちの身近には人間という生き物も住んでいるけれども、人間にも病気の子どもたちがいるんだよ。だけれどもハムスター雑技団が人間の病院で雑技をしたら人間たちが驚いてしまうから、ハムスター雑技団が行くことはできないんだって。人間の子どもたちにもハムスター雑技団のような楽しみを与えてくれる団体があるといいのにね。」
    おわり
     
    (初公開2014年11月24日)


     
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