教育用事例:ロシアでのマスクの価格

2020.02.06 Thursday

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     僕はかつて慶應の大学院で、計量経済学の教員から経営の経済学 (business economics) も学びました。教材は経済学のジンマーマン先生たちが執筆した洋書でした。その中に、アメリカで災害時にも営利企業は価格を吊り上げなかった、それは顧客との良好な関係を維持して長期的な利益を図るためだった、というお話が載っていたと思います。経済学では需要と供給で価格が決まるというのは基本です。しかし短期的な利益最大化に走ることは経営上望ましくない、というわけです。

     

     新型コロナウイルスの影響で、現在ロシアで薬局が販売するマスクの価格が高騰しています。極端な場合はかつての60倍くらいの価格になっているようです。プーチン大統領はそうした薬局の営業許可の取り消しに今月言及しています。副首相が問題視したため、プーチン大統領もこのような言及をしたのでしょう。副首相や大統領が価格にどう対応すべきかはロシアの法制度にまだロシア語を習得していない僕は詳しくないので、対応の良し悪しはこの記事では特に言及しません。法学部の関係者にとっては対応の良し悪しが重要でしょうね。そして、ロシア政府はこのマスクの価格の吊り上げを不当、と見ているようです。

     

     『市場対国家』からして、ロシアは今日では市場経済の要素をある程度は取り入れているはずです。薬局がもし営利企業であるならば、ロシア政府からの処罰がなくても顧客との良好な関係を維持できなくなる価格の吊り上げは、長期的な利益という市場経済であれば営利企業が目指すものを損ねる失策です。そして、ジンマーマン先生たちがおっしゃっていたと思うお話と違うのは、ロシアでは今回のマスクの価格の問題を顧客による反応に委ねず、あるいは丸投げせず、ロシア政府が介入した点です。また、価格について不当という発想は、正教会ではなくカトリックのアクィナスの公正価格という発想に通じるものがありそうです。公正価格について、最近ではサンデル先生がご著書で言及なさっていたと思います。

     

     ロシアの消費者にとってマスクの価格が吊り上げられていることは深刻な問題なのでしょうが、経営の経済学の観点からはこの学術領域への理解を深める話題をこのマスクの価格問題は提供しています。なおマスクの価格の吊り上げは、薬局がもし民間非営利組織や政府機関であれば、非営利性や公益性に疑義が生じてしまう倫理的な問題です。そのため、もしご存知の方がいらっしゃれば、問題になっている薬局が営利企業か否かご教示いただきたいところです。

     

     

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    2020.03.30 Monday

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