教育用事例:産経新聞によるWSJへの言及

2020.02.20 Thursday

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     原典に触れることは、正確性を担保するために有用なことがあります。言及している文献では誤訳などがされている可能性があるからです。原典が英語などの外国語の場合は、学部生にとってはハードに感じることもあるでしょうが、それでも学部生にもお勧めです。もちろん全ての事項について原典を確認するのは効率的ではありませんので、学生にも教員にも全て原典を見るべし、とまでは言いづらいです。例えば会計史研究では全ての原典まで見るのは困難なことが多いでしょう。

     

     僕は普段は検索エンジンとしてはグーグルを使っていますが、昨日Yahooが産経新聞のある面白い記事をニュースのリストに載せました。その記事は、日本では珍しく消費増税への批判につながりうるものでした。ウォール・ストリート・ジャーナル、略称WSJ、が社説で日本の消費増税を批判したことに触れたのです。WSJの社説は普段から、日本語の新聞で見受けられる低品質なものではなく、高品質なものです。産経新聞が様々な社会問題について持っている見解の中には、僕には同意できないものがありますが、今回の記事を報道の自由が西洋の大部分と比べ十分には担保されていない日本で載せたことは勇敢です。

     

     ただし、産経新聞のこの記事には誤りもあります。WSJの社説は日本に財政支出を勧めていると産経新聞はしていますが、実際にはWSJは勧めていません。WSJにはおまけのようなものとして一部の記事の和訳があります。日本時間18日に公表された今回の社説にも和訳があります。確かにその和訳からは、WSJが主語という解釈もできるでしょう。しかし原典でありいわば正文である英文では、いつもの注意人物なる人々が主語です。いつもの注意人物とは具体的には安倍総理に対立する政治家などでしょうね。またそもそもWSJは新自由主義の立場を採っています。新自由主義はベーシック・インカムを認めることはありますが、所得再分配には反対します。実際にWSJの日本時間2019年4月4日に公表された社説は財政支出に批判的です。この誤りは、実務での財政支出の是非の検討や新自由主義への学術的理解の上で支障となります。

     

     原典を見れば誤りを見破れるこのような事例があるわけですから、学生の皆様はレポートや卒論で活用する文献について必要に応じて原典を見ていくとよいです。なお、WSJは新自由主義を採りつつも、新ケインズ派である僕のことをWSJオピニオン・リーダーの一人としてくれています。おそらくはアカデミック・インテグリティがあれば対立する学説の支持者も活用できる、という見解をWSJは採っているのかもしれません。具体的な内容は機密に触れるといけないので言いづらいですが、WSJオピニオン・リーダーとしての作業は今のところ日本語ではなく英語がベースです。

     

     

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    2020.03.30 Monday

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