株の空売りと贈与

2020.05.21 Thursday

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     株の売買には、空売りという手法があります。空売りでは投資家にとって、当該銘柄の株を売る方が株を買うよりも時間的に先になります。当該銘柄の株価が下がった方が空売りをする投資家は儲かります。現在はコロナウイルスの流行で株価が下がることがあるので、空売りは投資家にとって普段より有効な売買の手法かもしれません。僕自身はいくつかの理由から空売りはしていません。しかし各地の大学の経営学部で金融関係の学習をしている方々は、将来の家計運営の手段として空売りをも想定に入れておくとよいでしょう。そして、この空売りから日本の税制を考えると、学術的にある興味深いことが分かります。このブログの読者にいずれかの大学の学生の方々がどのくらいいるかは分かりませんが、主として学生の考察力を高めてもらう道具として空売りについてのこの記事を書いてみます。

     

     日本の税制では、どのような債務免除であれ、債務免除を受けると贈与をされた扱いとなります。贈与という人類学の用語は寄付よりも少し概念として広いようですが、それでも寄付をもらうのと似たようなものですね。民間非営利組織ではなく営利企業が寄付をされるのはかなりの例外ですが、営利企業が債務免除を受けるという事態はかなり例外的な状況です。贈与が営利企業にされてもかなり例外的と位置付けられるならば、一見して問題なさそうです。

     

     日本の会計の実務では空売りをする投資家が営利企業である場合には、株を売った際に売付有価証券という負債を貸方に計上します。そして日本では通常の売買目的有価証券の仕訳に準じて空売りの仕訳をすることになっているので、ある会計期末に株価が下がっていることで無事に収益を獲得したら、[(借方)売付有価証券××、(貸方)有価証券評価益××]とでも仕訳していることでしょう。しかし、実は負債の減少による収益ですから、[(借方)売付有価証券××、(貸方)債務免除益××]と仕訳した方が経済実態に即するでしょう。この仕訳から、空売りによる収益の経済実態は債務免除益だと言えそうですね。

     

     営利企業による空売りによる収益は、誰かから贈与されたことによる収益だ、と考える会計プロフェッションや株主はあまりいないでしょう。また何らかの取引が営利企業にとって贈与たりうるにはかなりの例外である必要もありそうですが、空売りから収益が上がることは、営利企業にとってかなりの例外とまでは言い難いでしょう。しかし日本の税制が経済実態を反映しているとすれば、本来は空売りからの収益を贈与からの収益として扱うべし、という奇妙な主張につながってしまいます。そこで、全ての債務免除が贈与というわけではない、という理解に税制も立った方がよさそうなのです。

     

     このくらいの会計学や租税論についての考察ができる学生の方々は、きっとおもしろいレポートや卒業論文を書けることでしょう。今回の記事での空売りの考察ですが、このブログの読者の皆様はこの考察が合っていると思いますか?誤りだと思いますか?理由は何ですか?

     

     

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    2020.05.31 Sunday

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