従業員は資産か否か

2020.01.11 Saturday

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     株式会社にとって従業員は企業会計上は資産と言えるか否か、という疑問を持つ方々はそれなりにいらっしゃるでしょう。この話題には、故アンソニー先生も触れていました。旧来日本の会計学は法学の影響が強く、近年ではファイナンス論の影響が強いです。典型的には日本の主観のれん学説にはファイナンス論の影響があります。

     

     法学からしてみれば、所有権に注目します。実際に世界で見ても、奴隷制があった時代に奴隷を資産計上している史料は存在しています。奴隷に対して所有権を持つ、という発想があったのでしょう。奴隷制があった時代の話はショッキングですが、大学院受験を考えている方々には会計史の知識は意味を持ちます。現代では、実態としては奴隷に近い従業員がいるかもしれませんが、従業員は法学上は株式会社の奴隷ではありません。メルクマールと言えるのは、株式会社は従業員を売買できません。よって、法学を重視すれば従業員は会計上は資産ではありません。この法学を重視した場合の話は、僕も関東学院の学生の皆様にしばしばしている気がします。

     

     ファイナンス論を重視すると少し厄介です。将来の経済的便益を従業員が独占的にある株式会社にもたらすか否かを見ることになります。アメリカであれば従業員の株式会社間の移動は比較的容易であり、独占的には経済的便益を特定の株式会社にもたらさないので、会計上は資産とは言えません。日本では、不当解雇は容易かもしれませんが、年功序列と終身雇用があるので従業員の希望による株式会社間の移動が困難です。しかし、狭い意味の経営学において従業員のモチベーションを喚起するのは一大テーマです。特定の株式会社に不満を持つ従業員は、経済的便益を提供しない余地はあるかもしれません。雇用されつつも、不満からあえて足をひっぱるのです。ですから、やはり会計上は資産とは言えなさそうです。このファイナンス論を重視した場合の話は、アメリカではなく日本においてどうなのかとすれば、議論の余地は大きいでしょう。皆様はファイナンス論を重視すれば日本において従業員は資産と思いますか、思いませんか、それはなぜですか?

     

     

    JUGEMテーマ:学問・学校

    「可」教員の認定

    2020.01.09 Thursday

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       一時は認定されていたことを忘れていたのですが、僕は日本文化が原因で博士号をもらえなかったものの、「可」教員の認定を民主党政権時代の文科省からもらっていました。いわば大学版の教員免許であり、また「可」教員はフランスのアグレジェと類似しています。フランスのアグレジェも、博士号がなくても大学教員になれる資格です。そしてフランスのアグレジェは研究というよりは教育の資格です。「可」教員としての学術領域は少なくとも僕は認定時に指定されていますが、フランスのアグレジェも特定の学術領域について与えられるようです。類似し過ぎていますから、「可」教員という仕組みはフランスのアグレジェを参考に作られた仕組みなのかもしれません。現在、「可」教員の正式な欧文表記はないと思います。別に勝手に名刺にアグレジェと書いても、嘘ではないでしょう。けれども、文科省が欧文表記をアグレジェにしてくれれば、堂々と名刺にもアグレジェと書けます。

       

       

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      アメリカとイランへのダブル・スタンダード

      2020.01.07 Tuesday

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         最近のアメリカとイランの対立について、戦争への発展を避けるべきことは大前提です。戦争は経営学や経済学の観点からすれば、経済的な打撃をもたらすからです。また、アメリカ人もイラン人も死傷するでしょうし、第三国からも死傷者が出るかもしれないからです。

         

         その上で、日本の政治家や日本語マスコミなどにはダブル・スタンダードが目立ちます。国益と称するものにこだわっているらしき日本の政府関係者すらも公正に価値があると主張することがありますが、ダブル・スタンダードは不公正です。分かりやすいダブル・スタンダード (の少なくとも一部) は以下のものです:

        • 国際法をイランが破ってもあまり責めないのに、アメリカが国際法を破ったとして責めること。…ムスリムでないイランの人民をイラン政府が迫害することがあるのは国連の宣言の中で特別な位置づけにあるらしい世界人権宣言に抵触しています。最近の対立でアメリカが国際法を破ったかはまだ日本の民間人には判断材料が足りませんし、破っていても西洋倫理学では実定法にはむしろ破られるべきことがあることが知られているのでそれに該当していないかも検討が必要です。
        • 日本は何かにつけてアメリカの行動を報復呼ばわりし非難することがあるのに、イランが報復を宣言してもあまり責めないこと。…アメリカは正義の国だから多くの国々と違い特別に報復を禁じるべし、という発想ならありえるかもしれませんが、反米主義者はアメリカを正義の国とは見ていませんよね。
        • 平和主義者を装う勢力がウクライナの危機に際してロシア政府 (…おそらくロシア政府の全体が紛争を望んでいたわけではありませんが…) をあまり責めなかったのに、今回の対立ではアメリカを責めていること。…北方領土・南クリルの問題を日本の有利に運ぶためにロシア政府の機嫌を取りたかったのかもしれませんが、功利主義から見ればウクライナの若者が苦しんでいることの方が緊急の問題でした。

         

        日本の反米主義者などは、事実関係に関わらずアメリカとイランの対立でどちらに主たる落ち度があるかを最初から決めつけているのです。

         

         反米主義者でないならすべき判断は、事実関係に基づいた判断です。日本の政府関係者が特別な情報を持っているかの世はありますが、日本で民間人が容易に入手できる情報はまだ限られています。分かるものを分からないと言うのを好む日本人は多いかもしれませんが、反対に分からないものを分かると言うのを好む日本人もいるのかもしれません。判断の正確性を重んじれば、現時点で日本の民間人がすべき判断はどちらに主たる落ち度があるか確たることは分からない、というものでしょう。もちろん、アメリカは政府の情報開示の制度が整備されているようなので、ゆくゆくは事実関係がはっきりしてくると思います。

        徳川美術館に寄る

        2020.01.05 Sunday

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           伊勢市にいる父側の祖母に先週土曜に会ってきました。横浜からは伊勢市よりも韓国のソウルの方が行きやすいようで、片道だけでもかなり時間が要りましたし電車の乗り継ぎも多かったです。しかし、一時間程度祖母と会話できました。僕は以前伊勢神宮を見学したことがありますが、今回は寄りませんでした。神道の氏子の方々は正月に伊勢神宮に参拝しにいくこともあるのでしょう。

           

           帰りに、名古屋にある徳川美術館に寄ってきました。徳川美術館のある場所は、江戸時代はどうだったか別としても、現代では交通の便はあまりよくないようで少々歩きました。江戸時代当時の徳川家といえばキリシタン弾圧などをした一族ですが、徳川家ゆかりの美術品の芸術的価値は否定できません。以下、入館料金は合わさっているので、徳川美術館本体と文庫とを区別せずこの記事を書きます。

           

           国宝である初音の調度の公開期間中であり、初音の調度のあった第5展示室には良い意味で派手な工芸品が多々ありました。企画展「奏でる」に展示されていた和楽器や琉球楽器は、間近で見たことが僕はあまり (全く?) なかったので、斬新でした。見た目も見ごたえのある和楽器や琉球楽器がありました。2時間程度徳川美術館に滞在できましたが、それでも鑑賞時間が不足しており、特別展「良寛さん」はじっくりは鑑賞できませんでした。

          「太平楽」拝聴

          2020.01.02 Thursday

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             昨日NHKが放送した宮内庁による舞楽「太平楽」を録画していたので、拝聴しました。日本舞踊のみでなく雅楽にもまだ僕はなじみが薄いので、安くで聴けるのならばもっと聴くようにして理解力を高めたいです。そして韓国のアアクなどと聴き比べてみたいものです。さすがにアクロバットはありませんが、舞人は動きにくそうな衣装で舞っているので練習を要しているのでしょう。なかなかに聴きごたえがあるので、宮内庁がもし収益事業として舞楽を公演すれば、国の歳入を増やせるかもしれないと思います。NHKいわく、「太平楽」の舞人の衣装には伝統工芸が投入されているそうです。もしまだ日本の伝統工芸に経営学で言う暗黙知が使われているなら、早く形式知にして継承時のリスクを下げるべきでしょう。

            『経営理論大全』読了

            2019.12.31 Tuesday

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               今日、イギリスの書籍の訳書である『経営理論大全』を読了しました。狭い意味での経営学を知るうえで、悪くはない内容でした。洋書には秀逸なものが多々あるので訳書だけでも良い書籍はそれなりに入手できるのですが、『経営理論大全』もほとんどの和書と比べると格段に高品質と言えるでしょう。2015年にCMIから賞を受賞した書籍であることに、ある程度は納得です。原著については現在では第2版も公表されているので、十分な部数が売れたのでしょう。『経営理論大全』では、中間管理職が企業の目的に貢献できるようになるための様々な理論が紹介されています。

               

               ファースト・オーサーのマクグラス先生は経営学ではなく教育学の博士号をお持ちです。職人文化のある日本ではマクグラス先生のような経歴の先生が経営学の書籍を公表するのは、不可能ではないにせよ困難でしょう。日本には多芸は無芸と決めつける文化がありますが、少なくともオックスブリッジは学生教育において多方面の知識を与えることを好むのです。ただしマクグラス先生はオックスブリッジではなく、会計学で有名なバーミンガム大学出身です。なお、神学のマクグラス先生とは別人です。セカンド・オーサーのベイツ先生は、慈善団体の経営者でもいらっしゃるので、僕の専門分野とも関係が深いです。

               

               小さな疑問点は色々とありますが、大きな疑問点もあります。大きな疑問点は以下のものです:

              • マクグラス先生たちはマキャベリズムに反対なのですから、シャドウ・サイド理論が「大好き」というのは矛盾ではないでしょうか?もっとも僕も『君主論』は読みましたが、僕はマクグラス先生たちとは『君主論』の解釈も異なります。
              • マクグラス先生はイギリス社会に世襲があることを容認しています。世襲が全国にあることは、企業の目的である最大限の配当可能な利益を産みだす上では全国の企業の足を引っ張ります。中間管理職に公私にわたって世襲の廃絶の努力を勧めた方が一貫しているのではないでしょうか?

               

               

              参考文献

              ジェームス・マクグラス and ボブ・ベイツ『経営理論大全―すぐに使える最強のビジネスセオリー―』平野敦士カール監訳、朝日新聞出版、2015年 (The Little Book of Big Management Theories: And How to Use Them, Pearson Education, 2013)。

               

               

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              「第46回NHK古典芸能鑑賞会」鑑賞

              2019.12.29 Sunday

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                 NHKで「第46回NHK古典芸能鑑賞会」が放送された際に録画してあったので、鑑賞しました。インタビューなども飛ばさずに鑑賞しました。第46回ということは、なかなかに長く続いている鑑賞会ですね。

                 

                 前半には3演目がありました。「越天楽変奏曲」では、和楽器の奏者は和服を着て、洋楽器の奏者は洋服を着ているという点が興味深かったです。好みの曲でした。「四季三葉草」には、激しい動きが少しですがありました。舞手の動きにくそうな服装からすれば、特に練習が必要だった箇所でしょう。日本舞踊の鑑賞を楽しむには、僕の鑑賞力はまだ不足していると感じています。狂言である「髭櫓」は喜劇であり、この番組で僕にとって一番面白い演目でした。もちろん、現実社会でのDVには僕は反対です。

                 

                 後半は僕が好きなジャンルである歌舞伎でした。歌舞伎の「義経千本桜」の川連法眼館の場は、演出が異なるものを以前鑑賞したことがあったと思います。歌舞伎で源九郎狐が空を飛んでいく演出をかつて観たのですが、それがこの川連法眼館の場だったと思うのです。今回の番組では源九郎狐は空は飛んでいませんでした。今回の番組では、歌舞伎役者などの発声が上手かったです。文楽関係者が関与しての上演は、21世紀になっても歌舞伎ではまだ多くはないでしょう。

                縁故資本主義の分析:縁故資本主義者

                2019.12.28 Saturday

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                   縁故資本主義を分析するにあたって、縁故資本主義を推奨するエセ知識人である縁故資本主義者について知っておくのは有意義でしょう。エセ知識人は日本では大学にも溢れかえっているので、学生の皆様は注意が必要です。エセ知識人が日本の大学に溢れかえっている理由も検討すると学術的には面白いのですが。縁故資本主義者は、公正な社会はありえないとします。それは合っているかもしれません。しかし西洋倫理学では、公正な社会があり得なくても、公正な社会を目指そうとはします。縁故資本主義者は公正な社会を目指すこと自体に反対しているのが特徴でしょう。

                   

                   そして縁故資本主義者は、不公正な悪平等にはあまり反対しません。そのため、ソ連型の共産主義にはそれほど抵抗感のない縁故資本主義者もいることでしょう。縁故資本主義者は、年功序列と終身雇用に支えられた高齢者による若者からの搾取にもあまり反対しません。縁故資本主義者は、相対的には公正な新自由主義を憎んでやみません。縁故資本主義者はエセ知識人なので、アメリカにおけるネオ・ケインジアンの存在については知ってすらいないことも多いでしょう。そのため、縁故資本主義者によるネオ・ケインジアンへの非難は多くはありません。

                   

                   この点において縁故資本主義者に対峙しているのが、西洋倫理学なのです。そもそも『国富論』のアダム・スミスは倫理学者でもありました。会計学者のウィリアム・モース・コールも倫理学者でもありました。日本の経営学系統の学部の教員の中には倫理学を馬鹿にする教員もいます。しかし縁故資本主義者の欺瞞に騙されないために、経済学部や経営学部の学生にとっても西洋倫理学を学んでおく価値はあるのです。

                   

                   

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                  2019年度東京商品取引所と東証見学

                  2019.12.27 Friday

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                     今年度も、水谷ゼミ2年生の定番課外活動である東京商品取引所 (TOCOM) と東京証券取引所の見学をしました。ゼミ生の授業出席に響かないように、冬休みに入った後となる26日に行きました。こうした場所で日本で時価と呼ばれるものあるいはアメリカで公正価値と呼ばれるものが決まっているのです。東京商品取引所では担当者の方が学部生にもわかりやすいように先物の説明をしてくれました。東証には資料室があり、中年である僕とは世代の違うゼミ生たちは資料室にあるものを楽しんで見てくれたようです。

                     

                     水谷ゼミは日本人学生の入ゼミ歓迎ですが留学生が多く、上海証券取引所の知識を持ったゼミ生もいます。そうしたゼミ生には上海とは鐘の物理的な形が違うなどの東証ならではの特徴も面白かったでしょう。上海証券取引所は見学ができるようなので、上海への出張時にでも寄ってみたいです。今年度の水谷ゼミ2年生に香港からの留学生は偶然いませんが、香港証券取引所とも東証は物理的な違いがあり、それは東証には人が集まって取引していた名残があるという点です。

                     

                     東証にはお土産屋さんがあり、かつて水谷ゼミ生が買い物をしたことがあります。なかなかに品ぞろえの良いお土産屋さんです。証券投資の日のマスコットである、とうしくんはかわいいです。残念ならが東証のお土産屋さんではとうしくんのグッズは見つけられませんでした。よく探すともしかするとあるかもしれません。お土産屋さんには、つみたてワニーサのグッズも展示されていましたが非売品でした。とうしくんやつみたてワニーサのグッズをどこで買えるのかは気になります。

                     

                     実は東京には学部生の見学を受け付けてくれるようなのに、水谷ゼミの課外活動では一度も行ったことがない取引所もあるのです。FXの東京金融取引所です。水谷ゼミは会計学の専門ゼミなので、2年生の段階では株式や先物と比べFXの話は応用的な位置づけとなってしまうので見学にあまり向きません。しかし3年生以降でゼミ生たちから行きたいという声が上がることはありえるでしょうし、僕自身はいつか見学してみたいです。

                     

                     

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                    「モアナと伝説の海」鑑賞

                    2019.12.26 Thursday

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                       「モアナと伝説の海」を鑑賞しました。ディズニー映画にありがちであろう、勇気と優しさの物語でした。ただし他のディズニー映画と、具体的なストーリーはもちろん異なっていますので、ストーリーについても鑑賞する価値がありました。女性キャラクターであるモアナが冒険をするという点は、他のディズニー映画でもしばしば似た点が見られますが、ディズニー映画はジェンダーについて束縛が良い意味で緩いと言えます。技法としては、アメリカ映画では珍しくないであろう3Dアニメーションです。一方で日本においてはまだ、アニメ映画でも3Dアニメーションは少ないですね。一部の動物や一部の敵キャラクターは、かわいく描かれています。他に特筆すべき点としては、歌が良かったです。この作品について五段階評価をすれば、星4つです。